ノルウェー皇太子妃の長男ホイビー被告、38件で公判開始 王室に重なる「二つの逆風」

はじめに
ノルウェーで、皇太子妃メッテ=マリット氏の長男マリウス・ボルグ・ホイビー被告(29)の裁判が始まり、国内外の注目を集めています。起訴内容は性的暴行や家庭内暴力、薬物関連など計38件とされ、王室の信頼問題にも波及しています。さらに同じ時期、皇太子妃と故ジェフリー・エプスタイン元被告の接点を示す文書が公表され、王室は二重の逆風に直面しています。
背景と概要
ホイビー被告は、メッテ=マリット氏が皇太子ホーコン氏と結婚する前にもうけた子で、王位継承権や公式な王室の称号はありません。一方で「皇太子妃の長男」という立場上、私生活も含めて世間の関心が集まりやすい存在です。
刑事事件としては、複数の被害申告や捜査の積み重ねにより、性的暴行、恋人・近親者への暴力、脅迫、接近禁止命令違反、薬物関連、交通違反など幅広い嫌疑が整理され、起訴に至りました。ノルウェーは立憲君主制で、王室は政治権力を直接持たない一方、「国の統合の象徴」として高い信頼を土台に成り立っています。そのため、家族の不祥事が制度全体への評価に結びつきやすい構造があります。
現在の状況
裁判は2026年2月3日にオスロ地裁で始まりました。報道によれば、ホイビー被告は「強姦」4件(性交を伴う1件、性交を伴わない3件)と家庭内暴力の一部などについて無罪を主張する一方、軽微な罪状の一部は認め、別の一部については「部分的に認める」との立場を取っています。
検察側は、被告の携帯電話に残る動画などデジタル証拠にも触れつつ、起訴内容を立証する方針です。また、2026年1月にはマリファナ約3.5キロの所持・輸送に関する罪状が追加されたとされています。裁判開始直前にも新たな疑いで身柄拘束が報じられ、事件の広がりが改めて意識される展開となりました。
王室側は「司法判断に委ねる」との姿勢を取り、皇太子夫妻が公判を傍聴しない方針も伝えられています。検察は「王室と関係があっても扱いは同じ」と述べ、特別扱いの有無が論点化することを避けたい意図もうかがえます。
注目されるポイント
1)「王室の家族」でも一般市民として裁かれるのか
立憲君主制の国では、王室の存在は“政治的中立”と“品位・信頼”で支えられています。今回の裁判は、被告が称号を持たない一方で王室と密接につながる人物であるため、「法の下の平等」がどのように示されるかが注目点になります。
2)デジタル証拠の扱いと、裁判の争点の見えにくさ
性的暴行事件は、当事者の供述が対立しやすい類型です。今回は携帯電話の動画や検索履歴なども俎上に載り、同意の有無や状況認識(当事者の認識)をどう判断するかが焦点になり得ます。
3)王室人気の揺れと、制度への波及
世論調査では、王制維持への支持が低下したとの結果も報じられています。議会は王制維持を支持したものの、世論の数値が複数の調査で揺れており、王室の広報対応も含めて「信頼の回復プロセス」が問われています。
4)皇太子妃とエプスタイン元被告をめぐる文書公表が“同時多発”で響く
米司法省が公表した新たな関連文書で、皇太子妃とエプスタイン元被告のメール交流が、同被告の2008年の有罪後も続いていたことが改めて報じられました。皇太子妃は謝罪声明を出し、首相も説明を求める姿勢を示しています。息子の裁判と同時期にこの問題が再燃したことで、王室への視線は一層厳しくなっています。
今後の見通し
裁判は数週間規模で続く見通しとされ、最終的な有罪・無罪の判断は証拠と証言の評価に委ねられます。最も重い罪で有罪となれば長期刑となる可能性も指摘されていますが、結果は現時点で断定できません。
政治面では、王制そのものを直ちに変える動きが強まるとは限らないものの、王室への信頼が揺らぐ局面が長引けば、象徴としての役割や情報公開の在り方をめぐる議論が続く可能性があります。エプスタイン関連文書をめぐっては、王室に限らず著名人や公的機関の説明責任が問われる流れもあり、追加の調査や報道によって論点が拡大することも考えられます。

