NTTの「IOWN」世界標準化へ前進、IOWN Global ForumとETSIが協力枠組み、MWC 2026で存在感

はじめに
NTTが推進する光ベースの次世代通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」が、国際標準化を見据えて欧州で動きを加速させています。テレビ東京の取材では、NTTが主導するIOWN Global Forumが、欧州の標準化機関ETSI(European Telecommunications Standards Institute)と、標準化に向けた包括的な協力枠組みを結ぶ方針が明らかになりました。MWC Barcelona 2026(3月2日開幕)でも関連展示・発信が予定され、欧州市場・国際標準の両面で重要な局面に入っています。
背景と概要
IOWNは、ネットワークや計算基盤で「電気中心」から「光中心」へ置き換えることで、AI時代のトラフィック増と電力制約に対応しようとする構想です。中核技術の1つが、電気処理を極力減らして光伝送を前面に出す「APN(All-Photonics Network)」で、消費電力を100分の1に抑えるなどの目標が掲げられています。
一方、技術が普及するかどうかは「標準化(互換性)」が鍵です。特定企業の独自仕様のままでは、装置ベンダーや通信事業者、データセンター事業者が採用しにくく、エコシステムが広がりません。IOWN Global Forumは、産業横断で要件やアーキテクチャを整理し、オープンな仕様として普及させることを狙う枠組みです。
現在の状況
今回注目されているのは、IOWN Global ForumとETSIが協力関係を正式化し、標準化に向けた連携を進める点です。ETSI側の文書公開ポータルには、IOWN Global ForumとのMoU(覚書)を設ける決定が掲載されています。また、IOWN Global Forum側もMWC(バルセロナ)でETSIとのMoU署名を通じて協力を正式化した旨を発信しています。
MWC 2026では、NTTグループ(NTT/NTTドコモ/NTTデータ)がIOWN関連を含む展示・発信を予告しており、IOWNの“研究段階”から“商用・標準化段階”への移行を印象づける狙いが読み取れます。
注目されるポイント
1) ETSI連携の意味は「欧州での採用」だけではない
ETSIは欧州の通信標準を担う中核機関の1つで、5G/6Gやネットワーク仮想化、セキュリティなど幅広い領域で影響力を持ちます。IOWNがETSIの議論の場に入り、仕様・用語・要件が整備されれば、欧州域内の調達や制度要件との整合が取りやすくなります。同時に、国際標準・事実上の標準(デファクト)形成にも波及し得ます。
2) 「省電力」はAI・データセンター事情と直結する
IOWN/APNが前面に出す省電力は、通信事業者だけでなく、AI計算需要で電力制約が顕在化しているデータセンター側にも刺さりやすい論点です。標準化が進めば、相互接続や運用の前提が整い、採用判断がしやすくなります。
3) 標準化は“合意形成の時間”が必要で、勝負は運用段階
MoUは出発点であり、すぐに単一の世界標準が確定するわけではありません。仕様策定(要件→アーキテクチャ→インターフェース→適合試験)と、ベンダー実装・相互接続検証・商用導入のループが必要です。MWCでの発信は、欧州プレーヤーの巻き込みと実装側の参加を促す意味合いが強いと考えられます。
今後の見通し
短期的には、ETSI側でどの技術領域(光トランスポート、ネットワーク制御、データセンター接続、AI向けネットワーク要件など)から議論を具体化するかが焦点です。中期的には、複数ベンダーで相互接続が担保される「オープン仕様」として浸透できるか、また欧州の通信・データセンター事業者が商用の要件として採り込むかが分水嶺になります。
日本企業にとっては、標準化の場で主導権を握れるかが、機器・部材・運用ノウハウの“稼ぐ力”に直結します。逆に言えば、標準化が進むほど競合も参入しやすくなるため、技術・知財・実装力をどこに置くか(何をオープンにし、何で差別化するか)が次の課題になります。

