東京・大阪間を24時間自動輸送!「自動物流道路」の実証実験で見たCuebusのリニアモーター式搬送機の可能性

はじめに
東京・大阪間を24時間無人で結ぶ――。そんな構想を掲げる国土交通省の「自動物流道路(オートフロー・ロード)」が、少しずつ具体像を見せ始めています。今回注目されたのは、成田空港周辺で行われた実証実験で、Cuebusがリニアモーター式搬送機を使い、最大1トンの荷物を自動搬送し、100メートルの連続搬送にも成功した点です。とはいえ、これは東京―大阪間の実現をそのまま意味するわけではありません。重要なのは、この技術がどこまで拡張可能で、どこにまだ課題が残っているのかを見極めることです。
背景と概要
自動物流道路は、道路空間に物流専用のスペースを設け、無人・自動化された搬送機器で貨物を24時間運ぶ構想です。国土交通省は、2030年代半ばの社会実装を目指すと整理しており、将来の輸送力不足やカーボンニュートラル対応の切り札の一つとして位置づけています。政府の最終とりまとめ案では、自動物流道路が将来不足する輸送量の約8〜22%をカバーし得るとの試算も示されています。
今回の成田での実証は、その大構想の一部です。国土交通省の「令和7年度自動物流道路の社会実装に向けた実証実験」のうち、「ユースケース2 本線単路部:搬送機器の自動走行」に当たり、速度や貨物重量の異なる搬送機器の走行、必要な道路幅、走行環境、貨物への影響などを検証するために行われました。
Cuebusが持ち込んだのは、もともと都市型立体ロボット倉庫で培ってきたリニアモーター技術です。地面側にリニアモーターユニットを並べ、その上をシンプルな構造の台車が走る方式で、倉庫内では高密度保管と自動搬送を両立させてきました。今回の実証は、その技術を“倉庫の中”から“道路インフラ”へ拡張できるかを試す意味合いを持っていました。
現在の状況
Cuebusは2026年2月9日から20日にかけて、成田国際空港の道路区間で実証を実施し、3月9日に結果を公表しました。発表によると、最大1000kgの自動搬送と、100ユニットのリニアモーターを連結した100メートルの連続搬送に成功しています。会社側は、ユニットを追加で敷設することで、理論上は東京―大阪間の長距離搬送が可能であることを示せたと説明しています。
ここで重要なのは、「理論上可能」と「社会実装が近い」は同じではないという点です。今回の成果はあくまで、リニアモーター式の搬送機が道路空間に近い環境でも一定の荷重を載せて自動走行できること、そしてユニットの継ぎ足しで連続搬送を延ばせることを示したものです。東京―大阪間約500kmの常時運用に必要な速度、耐久性、分岐制御、保守体制、標準化、安全基準まで確認できたわけではありません。
注目されるポイント
1) 可能性の本質は「長距離」より「モジュール化」
今回の実証で最も大きいのは、単に100メートル走ったことではなく、リニアモーターのユニットをつなぐ発想で搬送距離を伸ばせることを示した点です。これは、道路全体を巨大な一体設備として作るのではなく、モジュールを積み上げてスケールさせる考え方につながります。もしこの方式が安定すれば、幹線ルートだけでなく、物流拠点や空港・港湾周辺の限定区間から先行整備しやすくなる可能性があります。
2) Cuebusの強みは「倉庫技術」を道路へ持ち出したこと
同社の技術は、もともと高密度倉庫の自動搬送に最適化されてきました。今回の実証で注目すべきは、その技術を単なる倉庫内機器にとどめず、道路専用空間の搬送インフラへ応用しようとしている点です。自動物流道路が本当に機能するには、道路側だけでなく、荷さばきや保管、積み替えまで一体でつながる必要があります。その意味で、倉庫起点の技術を持つCuebusには独自の立ち位置があります。
3) ただし、現時点では“速度”と“運用”がまだ見えていない
今回の実証で会社側が次の課題として挙げているのは、最高速度の向上、複数台を密接させた走行制御、ICを想定した分岐対応、さらなる高密度保管です。これは裏を返せば、長距離インフラとして本当に成立させるうえで、まだ詰めるべき核心部分が残っているということです。東京―大阪間を24時間結ぶには、単に「動く」だけでは足りず、止まらず、詰まらず、分かれ、戻り、保守できることが必要になります。
4) 最大のハードルは技術よりも社会実装の設計
自動物流道路の難しさは、搬送機そのものより、むしろ全体設計にあります。国土交通省のとりまとめでも、事業スキーム、安全基準、運営形態、資金調達、他モードとの競争環境など、多数の論点が残っていると整理されています。民間事業者からも、建設・運営・維持・保有の各段階で多様なリスクが指摘されています。つまり、技術が有望でも、それだけで全国インフラにはなりません。
5) 本当の価値は「東京―大阪」より「物流のボトルネック解消」にある
見出しとしては東京―大阪間の24時間自動輸送が目を引きますが、現実的には、まず拠点間の短中距離輸送、空港や港湾周辺、物流センター接続部など、ボトルネックの強い場所から効果が出る可能性があります。そこで稼働実績を積み、規格や安全運用の知見を蓄積してから、より長い幹線へ伸ばす方が自然です。Cuebusのようなモジュール型技術は、その段階的整備と相性がよいかもしれません。
今後の見通し
国土交通省は、2027年度までに新東名建設中区間などでさらに社会実験を進める方向です。Cuebusも、今回の成果を踏まえて新東名建設中区間等での次フェーズを見据えるとしています。今後の焦点は、実験環境での「可能性」から、実運用に必要な「継続性」へ移れるかどうかです。
Cuebusのリニアモーター式搬送機は、少なくとも今回、単なるコンセプトではなく、一定の重量物を道路空間に近い環境で自動搬送できる技術として存在感を示しました。ただし、東京―大阪間の24時間自動輸送という壮大な構想を実現するには、速度、分岐、標準化、保守、採算、安全基準など、まだ多くの壁があります。
それでも、物流危機が現実味を増すなかで、「専用空間を24時間無人で流す」という発想自体は、今後の日本の物流インフラを考えるうえで無視できない選択肢になりつつあります。Cuebusの実証は、その入口を初めて具体的に見せた一歩として評価するのが妥当でしょう。

