ホルムズ海峡“実質封鎖”で日本の備蓄は持つのか?ガソリン価格の見通し

ホルムズ海峡が「実質封鎖」に近い状態(=主要船社が通峡を停止・保険や安全面で通航が急減)になった場合、日本は “物理的な供給不足”より先に“価格ショック” を受けやすいです。足元の材料と、見通しを整理します。
1) ホルムズ海峡「実質封鎖」の意味合い
今回の局面では、イラン側の警告や攻撃リスクの高まりを受けて、大手船社・タンカー運航者が通航を止める動きが出ています。日本の大手海運もホルムズ周辺での運航を停止したと報じられています。
この場合、法律上の「封鎖宣言」よりも先に、商業輸送が縮む(=実質的に閉まる)のがポイントです。
2) 日本の石油備蓄の現状(最新の公表値)
資源エネルギー庁の公表(2025年12月末時点)では、日本の備蓄は次の通りです。
- 国家備蓄:146日分(製品換算)
- 民間備蓄:101日分(製品換算)
- 産油国共同備蓄:7日分(製品換算)
- 合計:254日分(製品換算)
- IEA基準換算:214日分
また制度として、日本は「国家備蓄+民間備蓄+産油国共同備蓄」の3本立てで運用していることが明示されています。
結論:短期(数週間〜数か月)の供給途絶に対して、在庫面の“時間の余裕”は非常に厚い部類です。
3) ただし「備蓄が厚い=ガソリンが安定」とは限らない理由
備蓄が厚くても、ホルムズが詰まると次の3点で影響が出やすいです。
- 価格が先に跳ねる
供給の“量”が足りていても、市場は先回りして原油・製品価格を上げます。足元ではブレントが急伸し、長期化なら100ドル超も意識されるとの見方が報じられています。 - 日本は中東依存が高い
報道では日本の原油調達は中東比率が非常に高いとされ、物流の詰まりは心理的にも価格面でも効きやすい構造です。 - “在庫はあるが、流通が詰まる”局面
製油所→油槽所→SSの物流や、特定製品(ガソリン)への配分で、地域・銘柄・タイミングによる「品薄感」が出ることがあります(災害時と同じ構図)。これは価格の上振れ要因にもなります。
4) 現在のガソリン価格(日本の足元)
直近の公表ベースでは、レギュラーの全国平均(SS小売・現金)が
- 157.1円/L(2026年2月24日時点)
です。
重要なのは、ガソリンへの補助は2025年12月30日で終了している点です(軽油などは別単価の支援が残っています)。
つまり今は、原油・製品市況の上昇が 以前よりダイレクトに小売へ出やすい環境です。
5) 今後のガソリン価格見通し(シナリオ別)
目安として、原油が $10/バレル上がると、為替にもよりますがコストは概ね 1Lあたり約9〜10円程度上がり得ます(1バレル=約159Lの換算、+消費税分など)。
ここに、流通マージンや需給の上振れが乗ると振れ幅が広がります。
シナリオA:数日〜1週間で通航が回復
- 市場のショックは出ても、現物不足が顕在化しにくい
- 店頭は数円〜10円未満の上振れに収まりやすい(上がっても早期に落ち着く可能性)
シナリオB:2〜4週間、実質封鎖が続く(保険・安全面で通峡が細る)
- ブレントが $90〜$100を意識しやすく、製品市況も上がる
- +10〜25円/L程度の上昇が現実味(157円→170〜180円台)
シナリオC:1〜3か月、軍事衝突が拡大し“物流の麻痺”が長期化
- $100超が常態化し、輸送コストや保険料も上がる
- +20〜40円/L級(180円台〜200円近辺)も視野
- 政府が備蓄放出や価格対策(補助再導入など)を検討する公算が高い
実際には「原油価格」「円相場」「政府の価格対策(補助の復活・備蓄放出)」「国内の需給(製油所稼働や在庫)」で大きく振れます。特に今は、ガソリン補助が止まっているため、上振れが出ると店頭反映は早くなりがちです。
6) 日本が取り得る短期対応(現実的なカード)
- 国家備蓄の放出/民間備蓄義務の一時調整(国内供給の目詰まり回避)
- 産油国共同備蓄の活用(緊急時に日本向け優先供給)
- 価格対策:過去の経緯を踏まえると、急騰局面では補助の再設計も政策オプションになり得ます(現時点ではガソリン補助は終了)。
いま注目すべき“次の確認ポイント”
- ホルムズの通航再開が「宣言」ではなく、保険・船社運航が戻るか
- ブレントが $90〜$100方向へ定着するか
- 日本政府が「備蓄放出」または「価格対策」を示すか(タイミングが最重要)

