原油市場日報 2026年5月20日

原油価格は、前日の上昇からいったん小幅に反落しました。Brentは111ドル台、WTIは107ドル台で取引を終え、米国とイランの交渉進展期待が価格を押し下げました。ただし、ホルムズ海峡の通航不安と在庫減少は残っており、日本のガソリン価格や物流コストにとっては、まだ安心できる水準ではありません。
きょうの値動き
米国時間5月19日の原油市場では、Brent先物が1バレル111.28ドルで取引を終え、前日比82セント安でした。WTIの6月限は107.77ドルで、前日比89セント安となりました。下落率は小さいものの、前日までの強い上昇に対して、いったん利益確定と和平期待の売りが入った形です。
なぜ動いたのか
主因は地政学です。トランプ米大統領は、イランへの攻撃再開を直前で見送ったことを明らかにし、イラン側から新たな和平提案が出ていると説明しました。バンス米副大統領も、米国とイランの協議には大きな進展があると述べており、市場ではホルムズ海峡の供給不安が一部和らぐとの見方が広がりました。
一方で、需給面はまだ強気材料を抱えています。IEAのビロル事務局長は、イラン戦争とホルムズ海峡の閉鎖により商業用石油在庫が急速に減っており、戦略備蓄の放出も「無限ではない」と警告しました。IEAによると、世界の観測可能な石油在庫は3月と4月に合計2億4600万バレル減少しています。
金融市場要因としては、原油高によるインフレ懸念が米長期金利を押し上げ、ドル高も進みました。Reutersによると、ドル円は159円台で推移しており、円安は日本の輸入コストを押し上げる要因です。市場心理・ポジション調整では、「和平期待で売る動き」と「在庫不足で押し目を拾う動き」がぶつかっています。
この動きは一時反応か
今回の下落は、一時的なリスクプレミアムの剝落と見るのが妥当です。Brentが111ドル台、WTIが107ドル台に残っている以上、原油市場が平常化したとは言えません。ホルムズ海峡は2025年に日量約2000万バレルの原油・石油製品が通過した世界有数の要衝で、代替ルートの余力も限られます。
つまり、今日の値下がりは「供給不安が消えた」ためではなく、「交渉進展への期待でいったん買いが緩んだ」動きです。米国とイランの合意が具体化し、船舶通航が回復すれば、Brentは110ドル割れを試しやすくなります。一方、協議が崩れれば、再び115ドル方向を試す可能性があります。
日本への影響
日本にとっては、原油価格が少し下がったことよりも、Brentがなお110ドル台にあることが重要です。ホルムズ海峡を通る原油の多くはアジア向けで、IEAも日本と韓国は同海峡を通る原油への依存度が高いと説明しています。原油高と円安が重なれば、ガソリン価格、電気代、航空運賃、食品や日用品の物流費にじわじわ波及します。
明日の注目点
明日は、Brentが110ドル台を維持するか、WTIが107ドル台から再び上を試すかが焦点です。加えて、米国とイランの協議続報、ホルムズ海峡の実際の通航状況、そして米EIA週間在庫統計で在庫減少が続くかを確認する必要があります。原油価格が今後どうなるかは、和平期待の見出しだけでなく、実際に原油と石油製品が市場へ届くかで決まります。

