「ドンロー主義(Donroe Doctrine)」とは何か?―モンロー主義の“再武装”と米州への強硬回帰

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はじめに

「ドンロー主義」とは、米国の歴史的な外交理念であるモンロー主義(Monroe Doctrine)を、トランプ米大統領の名前(Donald)に掛けて呼ぶ造語です。2026年1月3日の会見でトランプ氏が冗談めかして使った表現が拡散し、以後、ラテンアメリカ政策を象徴する“呼び名”として語られるようになりました。フランス24+1
ただし、これは学術的に確立した概念というより、トランプ政権の「西半球(米州)を優先し、域外勢力の影響を排する」姿勢を示す政治的レッテルに近い言葉です。 The White House+1

背景と概要

モンロー主義は1823年、当時の米大統領ジェームズ・モンローが年次教書で示した方針で、欧州列強による南北アメリカ大陸への干渉や再植民地化に反対する考え方として知られます。 National Archives+1
一方で20世紀初頭には、セオドア・ルーズベルト大統領が「ルーズベルト・コロラリー(補足)」として、米国が西半球で介入する余地を広げ、結果として軍事力を背景にした介入政策を正当化しやすい枠組みに変質した面も指摘されてきました。 米国務省歴史局+1

トランプ政権下で「ドンロー主義」と呼ばれるものは、この“介入を許容し得るモンロー主義”の系譜を想起させつつ、現代の争点(移民・麻薬組織・域外大国の影響・資源確保)を前面に押し出した点に特徴があるとみられています。 The White House+1

現在の状況

今回この言葉が一気に注目された契機は、米国がベネズエラで軍事行動を実施し、マドゥロ大統領を拘束したと報じられたことでした。トランプ氏は米国が同国を「運営する」といった趣旨の発言を行い、国連安保理でも合法性が争点化しています。 Reuters+1
国連のグテーレス事務総長は、地域の不安定化や国家間関係の先例になり得る点への懸念を示し、米国側は国連憲章51条(自衛権)を根拠に説明する構図が報じられました。 Reuters

国際社会の反応は割れており、各国は「国際法と国連憲章の順守」を繰り返し求めています。日本政府も「国際法の原則を重視する」という従来の立場を踏まえ、関係国と連携しつつ対応するとする趣旨のコメントが報じられました。 Reuters

注目されるポイント

1)「ドンロー主義」は“正式ドクトリン”というより、政権方針の通称

トランプ氏自身が会見で用いたのは、モンロー主義を誇張して語るための言葉遊びに近い位置づけです。 フランス24+1
一方で、政策文書レベルでは、2025年12月に公表された米国家安全保障戦略(NSS)が「モンロー主義を再主張・再執行する」と明記し、「トランプ・コロラリー(Trump Corollary)」として西半球での米国の優越と域外勢力の排除を掲げています。The White House+1
このため「ドンロー主義」は、公式用語というより、NSSに沿った路線を外部が要約して呼ぶ“政治的ラベル”として機能している面が大きいといえます。

2)狙いは「欧州牽制」より「域外大国の影響排除」と「越境課題の軍事化」

NSSでは、西半球において「敵対的な域外勢力の拠点化」や「重要資産の所有・支配」を認めない、という方向性が示されています。 The White House+1
さらに、国境管理・麻薬組織対策・海上交通路の確保など、従来は治安・法執行・外交で扱われがちだった領域に、軍事的選択肢を織り込む姿勢が読み取れる点が、従来の“孤立主義的なモンロー主義”イメージと異なるところです。 The White House+1

3)資源と“経済安全保障”が強く結び付く

ベネズエラをめぐっては、米国側が同国のエネルギー資源と統治の在り方を結び付けて語る場面が報じられています。 Reuters+1
結果として、介入の是非が「民主化支援」よりも「資源・供給網・勢力圏」の論理で語られやすくなり、周辺国からは主権侵害や帝国主義的回帰だとの反発も出やすい構図になります。 Reuters+1

4)トランプ氏が参照する“歴史観”との親和性

トランプ氏は高関税や拡張主義の時代を象徴するマッキンリー大統領を評価してきたとされ、通商(関税)と地政学(勢力圏)を結び付ける発想は、こうした歴史観と接続しやすいと指摘されています。 Atlantic Council+1

今後の見通し

今後の焦点は、次の3点です。

1つ目は、「ベネズエラの次」をめぐる抑止と反発です。米州諸国が主権侵害への警戒を強めれば、米国の影響力回復がむしろ対立を生む可能性があります。 Reuters+1

2つ目は、国際法上の正当化の行方です。自衛権(国連憲章51条)を用いた説明が国際的に受容されるのか、あるいは「武力行使の禁止」を損なう先例と見なされるのかで、他国の行動原理にも波及し得ます。 Reuters+1

3つ目は、「勢力圏」発想の固定化です。米国が西半球を最優先の戦略空間として位置づけるほど、中国・ロシアなど域外大国との摩擦は“グローバル競争”ではなく“地域の押し合い”として先鋭化しやすくなります。 The White House+1

「ドンロー主義」は言葉としては軽妙でも、その背後にあるのは、西半球をめぐる勢力圏政治の再浮上です。今後は、米国の具体的行動(軍事・制裁・資源・通商)と、周辺国の対抗策(多国間枠組み・対米距離の取り方)が、どこまで緊張を管理できるかが問われます。

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