2026年、ロシア「戦争経済」はどこまで持つのか:戦費・人的損耗・エネルギー収入の同時圧力

はじめに

2026年に入り、ロシアとウクライナは「前線の消耗戦」と同時に、ドローンやミサイルで電力・燃料などの基盤を狙う戦いをさらに激化させています。冬季のインフラ攻撃は社会への負荷が大きく、長期戦の持久力を左右します。ロシア側は高水準の軍事支出を続ける一方、財政の柱である石油・ガス収入が減り、制裁強化の動きも重なっています。

背景と概要

ロシアは侵攻の長期化に伴い、国家運営を「戦争を回すこと」を軸に組み替えてきました。SIPRIは、2025年のロシアの計画軍事支出を約15.5兆ルーブル(GDP比7.2%)と推計し、透明性の低下に注意を促しつつも、この水準自体は「管理可能だが圧力は高まり得る」としています。

同時に、エネルギー輸出で得る外貨・税収は、戦費や国内の安定維持を支える重要な資金源です。しかし2025年のロシア連邦予算における石油・ガス歳入は前年比24%減の8.48兆ルーブルとなり、2020年以来の低水準に落ち込みました。価格低下やルーブル高などが要因とされ、歳入の目減りは戦争継続コストの重荷になります。

現在の状況

1) 「インフラを狙う長距離攻撃」が日常化

2026年1月にかけて、ロシアはウクライナの電力インフラを狙う大規模なドローン・ミサイル攻撃を実施し、厳冬期の停電や暖房停止を引き起こしました。報道では、数百機規模のドローンと多数のミサイルを組み合わせた攻撃が続いています。

一方でウクライナ側も、占領地やロシア国内のエネルギー・工業関連施設をドローンで狙う作戦を継続しています。1月中旬には、占領下マリウポリ周辺の変電所(「Azovska 220kV」「Myrne付近」など)が攻撃を受け、広域停電や暖房への影響が報じられました(ウクライナ側発表やOSINTに依拠する情報で、独立検証が難しい点には留意が必要です)。

2) 人的損耗の規模は「推計レンジ」が大きい

戦争の継続力を測る上で人的損耗は核心ですが、ロシアは公式の詳細を公表していません。英国国防省は2025年10月時点でロシア側の「戦場での死傷」が累計110万超という推計を示しており、他方で米CSISも2025年春時点で累計死傷が非常に大きいとの推計を出しています(いずれも推計であり、前提や定義の差が出ます)。

3) 装備・生産と同盟調達:不足は「ゼロ化」ではなく「質の低下・構成変化」

ロシアの戦車・装甲車両の損耗は大きく、IISSは2024年に主力戦車の損失が約1,400両に達したと推計し、ロシアは旧式装備の投入や生産で穴埋めしていると分析しています。ReutersもIISSの評価として、ロシアがウクライナより損失を維持しやすい面がある一方、消耗が続くことを伝えています。
さらに報道では、ソ連時代の備蓄取り崩しに限界が見え始め、弾薬などを北朝鮮など外部供給に依存する比重が増しているとの指摘もあります。

4) 財政は「赤字+増税・借入」で耐える構図へ

ロシア財政は赤字基調が続き、2026~2028年の枠組みでも赤字を見込んでいます。フィンランド銀行(BOFIT)は2026年の赤字を約3.8兆ルーブル(GDP比1.6%)と整理し、増税や国債発行の比重が高まる見通しを示しました。
実際にReutersは、軍事費と財政制約を背景に2026年の付加価値税(VAT)引き上げ案などが検討されたと報じています。

注目されるポイント

  • 「軍事支出の高さ」だけで崩壊は語れない
    GDP比7%台の軍事支出は重い一方、国家が直ちに機能停止するかどうかは、徴兵・契約兵の補充、統制の強さ、エネルギー歳入の下支えなど複数要因で決まります。SIPRIも「支出水準は管理可能だが圧力は増し得る」と含みを残しています。
  • 最大の弱点は「資金源の変動」
    2025年の石油・ガス歳入の急減は、戦争経済の持久力に直結します。原油価格・為替・輸送網(いわゆる“影の船団”)への締め付けが強まるほど、赤字と国内負担(増税・社会支出圧縮)の圧力は上がります。
  • 制裁は「船・サービス」へ焦点が移る可能性
    EUは影の船団を追加制裁対象に入れ、さらにスウェーデンがEUの次の制裁で、保険・港湾修理などの支援禁止を含む包括策を提起しています。G7とEUが「価格上限制」から一歩踏み込み、海運サービス全体を縛る案を検討しているとの報道もあり、実現すればロシアの輸出実務に影響が出る可能性があります。
  • ドローン戦は「防空の穴」より「対応コスト」を増やす
    迎撃が一定機能しても、広域で多数の無人機・ミサイルが飛来する状況では、迎撃弾・レーダー・部隊配置などのコストが累積します。ロシア側が迎撃を発表する一方、被害が出る事例も報じられており、双方にとって消耗の構造は深まっています。

今後の見通し

現時点で「国家崩壊が確定」と断定できる材料は乏しい一方、ロシアの戦争継続は次の条件に左右されやすくなっています。

  1. 原油価格と石油・ガス歳入の戻り方
    2025年に歳入が大きく落ちた以上、価格回復が弱い場合は、赤字拡大→増税・借入増→民生圧迫の連鎖になりやすいです。
  2. 制裁の“実務”への踏み込み度合い
    影の船団や海運サービスへの規制が強まれば、輸出量・輸送コスト・割引販売の拡大を通じて歳入をさらに押し下げる可能性があります。
  3. 冬季インフラ攻撃の継続と、社会の耐久力
    2026年冬もインフラ攻撃が続けば、前線の戦況だけでなく、双方の都市生活・産業活動に波状的な影響が出ます。短期で勝敗が決しない場合、こうした「生活コスト」の積み上げが政治判断の余地を左右し得ます。
  4. 装備の質と補給の安定(国内生産+外部調達)
    旧式装備の投入や外部調達で量を補えても、質の低下や補給の脆弱化は作戦の選択肢を狭めます。逆にいえば、全面的な“枯渇”よりも、戦い方が変質し続ける可能性が高い局面です。

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