原油市場日報 2026年5月21日

原油価格は、大きく下落しました。Brentは105ドル台、WTIは98ドル台まで下がり、WTIは再び100ドルを割り込みました。米国とイランの交渉進展期待が、米在庫の大幅減という強材料を上回った形です。ただし、ホルムズ海峡の不安が完全に消えたわけではなく、日本のガソリン価格や物流コストへの警戒はまだ必要です。
きょうの値動き
米国時間5月20日の原油市場では、Brent先物が1バレル105.02ドルで取引を終え、前日比6.26ドル安となりました。WTI先物は98.26ドルで、前日比5.89ドル安です。下落率はいずれも約6%で、前日まで続いていた「高値圏での粘り」がいったん崩れた格好です。WTIが100ドルを割り込んだことで、市場の目線は再び「原油価格はどこまで下がるのか」に移っています。
なぜ動いたのか
主因は地政学リスクの後退です。トランプ米大統領が、米国とイランの交渉は「最終段階」にあると述べたことで、ホルムズ海峡の通航不安が和らぐとの期待が広がりました。イラン側も安全な海運手順の調整に前向きな姿勢を示しており、市場では原油価格に乗っていたリスクプレミアムが一気に剝がれました。
一方で、需給面はむしろ引き締まりを示しています。EIAによると、米商業用原油在庫は前週比790万バレル減の4億4500万バレルとなり、市場予想を大きく上回る減少でした。ガソリン在庫も150万バレル減り、米国の原油輸出は日量560万バレルに増えています。つまり、今日の原油価格がなぜ下がったのかといえば、在庫が余ったからではなく、和平期待が需給の強材料を上回ったためです。
金融市場要因としては、原油安がインフレ懸念をやや和らげ、金利やドルにも影響しました。市場心理・ポジション調整では、Brentが110ドル台、WTIが100ドル台で積み上がっていた買い持ちが、交渉進展報道をきっかけに一斉に整理されたと見られます。
この動きは一時反応か
今回の下落は、一時的なリスクプレミアムの剝落と見るのが妥当です。Brentが105ドル台、WTIが98ドル台まで下がったとはいえ、原油市場が平常化したとはまだ言えません。Reutersは、ホルムズ海峡の通航量が戦争前と比べてなお大きく限られていると伝えており、供給不安は完全には解消していません。
構造的な原油安に変わるには、米国とイランの合意が正式にまとまり、船舶通航が実際に回復し、在庫減少にも歯止めがかかる必要があります。反対に、交渉が崩れれば、Brentは再び110ドル台、WTIは100ドル台回復を試す可能性があります。
日本への影響
日本にとっては、WTIの100ドル割れよりも、Brentがなお105ドル台にあることが重要です。日本は、イラン戦争前に中東から原油輸入の約95%を調達していたとされ、ホルムズ海峡の不安が続く限り、輸入コストへの影響は避けにくい構造です。日本の石油元売りは代替調達を進めていますが、中東依存をすぐに大きく下げるのは簡単ではありません。
原油価格の急落は、将来的なガソリン価格や電気代の上昇圧力を和らげる材料です。ただし、円安や輸送コスト上昇が重なれば、国内価格への反映は遅れます。家計にとっては「原油が下がったからすぐ安くなる」と見るより、Brentが100ドル台に残っているかを確認する局面です。
明日の注目点
明日は、Brentが105ドル台を維持するか、WTIが100ドル台を回復するかが焦点です。あわせて、米国とイランの交渉が正式合意に近づくのか、ホルムズ海峡の船舶通航が実際に増えるのか、米在庫の大幅減が次週以降も続くのかを確認する必要があります。原油価格が今後どうなるかは、和平期待の見出しではなく、実際に原油と石油製品が市場へ届き始めるかで決まります。
