イラン政権崩壊説と「モスクワ脱出」報道:ロシア貨物便・金塊移送疑惑をどう読むか(2026年1月)

はじめに

イランでは2025年末からの抗議行動が全国に広がり、当局は強硬な取り締まりと大規模な通信遮断で対応しています。こうした混乱の中で、「体制エリートがモスクワへ逃亡準備を進めている」「ロシア機が武器を運び、同時に金(ゴールド)が国外へ出ている」といった話題が注目を集めています。
ただし、通信遮断で検証が難しい局面ほど、断片情報が“確定情報”のように流通しやすい点には注意が必要です。確認できる事実と、未確認の主張を切り分けて整理します。

背景と概要

抗議は生活苦(物価高・通貨安)への不満を起点に拡大し、次第に体制批判の色合いを強めたと報じられています。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)や国際メディアは、治安部隊による死者が「数百人規模」に達している可能性に言及し、拘束者への死刑適用を含む強硬化も懸念されています。

一方で、死者・拘束者数は人権団体集計と当局側見積もりが並走し、独立検証が難しい状況です。これは、イラン国内の通信遮断が広範に行われ、外部の観測が制約されていることが大きな要因です。

現在の状況

1) 「ロシア機がテヘランへ」「金が出ている」発言は“公式確認”ではない

英国議会では、トム・タゲンダット議員が「ロシアの貨物機がテヘランに降りている」「大量の金が国外へ出ている」といった“報告”に触れ、政権側が「崩壊後」を想定しているのではないか、という趣旨の問題提起を行ったと伝えられています。
ここで重要なのは、議会発言は「報告がある」という紹介であり、政府が事実認定した形ではない点です。とはいえ、こうした言及が公の場に出たこと自体は、欧州側でも「政権内部の動揺」や「資産退避」を警戒していることを示唆します。

2) ロシア—イラン間のIL-76便が「密」になっているのは観測されている

航空貨物の専門メディアは、2025年12月27日〜2026年1月1日にかけて、ロシア南部ミネラルヌィエ・ヴォーディ(Mineralnye Vody)とテヘラン間でIL-76TD機の運航が複数回確認されたと報じています。短期間に同一機体が繰り返し現れる点から、通常の臨時チャーターというより“意図的なタスク”の可能性を指摘しています。
ただし、これだけで「要人脱出」や「金塊移送」を断定することはできません。武器・弾薬の補給、部品輸送、あるいは政治危機に備えた予備的な兵站強化など、複数の解釈が成り立ちます。

3) ロシアの立場は「外部介入反対」を強めている

ロシア外務省は、米国による攻撃示唆や「不安定化を口実にした介入」を強く非難し、イラン情勢をめぐる外部の関与に反対する姿勢を鮮明にしています。これは、仮にイラン政権が弱体化すれば、ロシアの中東戦略や対西側カードが減る、という利害とも整合的です。

注目されるポイント

1) 「モスクワが退避先」になり得る理由

逃亡先としてロシアが取り沙汰される背景には、(a) 欧州や湾岸諸国が受け入れに慎重になりやすいこと、(b) ロシアが政治的に“保護”と“取引”をセットで扱えること、の2点があります。
ただし、退避の噂(空港画像、スーツケースの写真など)は未確認情報が混じりやすく、現時点では「画像が出回っている」以上の評価は控えるのが安全です。

2) 「武器が入って金が出る」なら、意味は2通りある

この構図が事実だと仮定すると、意味は大きく2つです。

  • 政権が鎮圧継続のために装備・弾薬を外部調達している
  • その見返りとして、外貨・金などの資産が国外へ移されている(あるいは、エリート層が個人的に資産退避している)

もっとも、現時点では“疑惑の域”を出ていない要素も多く、断定よりも「追加の裏取りが出てきたか」を継続監視する段階です。

3) ロシア—イランの軍事協力は、ウクライナ戦争とも連動する

ロシアがイラン製ドローン(シャヘド系)を使用してきたこと、またイランがロシアへ弾道ミサイルを供給したとの報道が過去に出ていることから、イラン政権の不安定化はロシアの戦争遂行能力にも影響し得ます。
一方で、ロシアは国内生産(イラン設計の機体をロシア側で量産)も進めているとされ、イラン側の供給が止まっても影響は“即死”ではなく、段階的に出る可能性があります。

今後の見通し

見通しを左右するのは、「街頭の人数」以上に、次の4点です。

  • 通信環境の変化:遮断が解除されるのか、国家管理型ネットへ移行するのか
  • 治安機関の統制:命令系統の維持/現場の消耗と不服従の兆候
  • 資産・人の移動:航空便のパターン、金融・金(ゴールド)移動の追加情報
  • 対外圧力の強度:米国の威嚇、欧州の制裁、ロシアの介入反対姿勢が、国内の行動をどう変えるか

現段階では「政権崩壊」や「軍が最高指導者を見限った」といった断言より、国際機関・主要通信社・複数ソースで裏付けが積み上がっている部分(死者増、拘束拡大、通信遮断、ロシア—イラン便の異常な密度、英議会での問題提起)を軸に、情勢を冷静に追うことが重要です。

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