日本がウズベキスタンとの連携強化、人口大国と産業協力の中核

はじめに
中央アジアの中で、日本が今後の関係強化で特に重視せざるを得ない国の一つがウズベキスタンです。世界銀行によると、ウズベキスタンは中央アジアで最大の人口を抱え、2024年時点で人口は3,700万人を超えています。規模の大きい国内市場を持つだけでなく、同国は日本が進める「中央アジア+日本」枠組みの中でも、産業、人材、エネルギー転換、制度協力を結び付けやすい相手になっています。
2025年には、第1回日・ウズベキスタン外相戦略対話が開かれ、同年12月には首脳会談で「次世代のための拡大された戦略的パートナーシップ」に関する共同声明が出されました。さらに東京で開かれた「中央アジア+日本」首脳会合では、今後5年間で総額3兆円のビジネス案件を目指す方向が確認されており、ウズベキスタンはその中核的な受け皿の一つとして位置づけられています。
背景と概要
日本がウズベキスタンを重視する理由は、単に「人口が多いから」ではありません。2025年8月の外相戦略対話の共同コミュニケでは、戦略対話の目的として、サプライチェーンの強靱性、エネルギー、食料安全保障、産業、イノベーション、医療、教育、労働移動性、文化・人的交流など、きわめて幅広い分野での長期的かつ互恵的な協力促進が明記されました。日本側はこの場で、ウズベキスタンの経済自由化と民主的変革を目指す改革を歓迎し、継続的に支える姿勢も示しています。
2025年12月の共同声明では、この関係がさらに一段進みました。両国は、政治、貿易、経済、文化、人的交流まで含む「拡大された戦略的パートナーシップ」を確認し、中央アジアの地政学的重要性が増しているとの認識も共有しています。つまり、日本にとってウズベキスタンは、単なる二国間の経済相手ではなく、中央アジア全体との関係を広げる上での基軸国として映っているのです。
現在の状況
経済面では、2025年12月に東京で「日本・ウズベキスタン ラウンドテーブル」が開かれ、赤澤経済産業大臣とミルジヨーエフ大統領が共同議長を務めました。経産省によると、この場ではウズベキスタンで事業を展開する日本企業が一堂に会し、大統領と事業推進に向けて直接対話したほか、複数のビジネス協力文書も披露されました。ここから見えるのは、日本とウズベキスタンの関係が、政府間の友好確認から企業案件を具体化する段階へ移っていることです。
エネルギー分野では、協力はすでに実案件として動いています。JBICは2025年10月、住友商事、中部電力、四国電力などが関与するウズベキスタンの太陽光発電・蓄電2案件にプロジェクトファイナンスを実施しました。JBICによれば、総発電容量は1,000MW、総蓄電容量は1,336MWhで、同国での再生可能エネルギー事業向けとしてはJBIC初の融資です。これは、日本のウズベキスタン協力が、資源国との関係から再エネ・電力インフラ協力へ広がっていることを示しています。
人材面でも関係は深まっています。JICAのウズベキスタン日本人材開発センターは、2025年11月にタシケント、サマルカンド、ブハラの3都市で日本留学フェアを開催し、来場者は計1,878人と前年を大きく上回りました。共同声明でも、JDS、人材育成、工学教育、研究能力強化などの協力が高く評価されており、日本がウズベキスタンを「市場」としてだけでなく、「将来の親日・産業人材基盤を育てる相手」として見ていることが分かります。
注目されるポイント
第一に、ウズベキスタンは中央アジアの中で、人口規模と制度改革の両面を兼ね備えた希少な相手です。資源や回廊で存在感の大きいカザフスタンに対し、ウズベキスタンは内需、市場規模、人材供給力で独自の重みを持ちます。日本にとっては、資源確保だけでなく、産業協力や技術移転を進めるうえで、より厚みのある相手になりやすい国です。
第二に、日本の対ウズベキスタン関係は、従来のODA中心から、官民一体の産業協力へと重心を移しつつあります。外相戦略対話で制度協力の土台を固め、首脳会談で関係を戦略格上げし、経産省のラウンドテーブルで企業案件をつなぎ、JBICが金融面で下支えするという流れは、その典型です。これは、日本がウズベキスタンを「支援対象」ではなく、「一緒に産業をつくる相手」と見始めたことを意味します。
第三に、ウズベキスタン重視は中央アジア全体戦略ともつながっています。「中央アジア+日本」首脳会合では、グリーン・強靱化、コネクティビティ、人づくりの3分野が優先協力分野とされ、重要鉱物、エネルギー転換、物流、人材育成への関心が共有されました。ウズベキスタンはその中で、資源一本ではなく、産業・教育・制度改革を組み合わせられる国として、日本の地域戦略の中核に入りつつあります。
今後の見通し
今後の焦点は、こうした政治文書や覚書がどこまで継続的な案件へつながるかです。再エネやインフラ案件が積み上がり、日本企業の事業展開が拡大すれば、ウズベキスタンは日本にとって中央アジア最大の「将来市場」としての意味をさらに強めるでしょう。反対に、制度改革や事業環境整備が鈍れば、期待先行で終わる可能性もあります。現時点では、両国関係はその分かれ目に差しかかっているといえます。
総じていえば、日本がウズベキスタンを外せないのは、同国が中央アジア最大の人口を持つからだけではありません。人口規模を背景にした市場性、産業協力の受け皿、再エネ案件の実装力、そして人材育成の蓄積が重なっているからです。カザフスタンが資源と回廊で重要なら、ウズベキスタンは市場と産業の中核として重要です。日本の中央アジア戦略は、この二つをどう組み合わせるかで厚みが決まっていくことになりそうです。

