日・カザフ協力は次の段階へ、JOGMEC、NEXI、直行便で進む官民一体の関係強化

はじめに
日本とカザフスタンの関係は、資源協力を中心とした従来型の関係から、案件形成、金融支援、物流、人の往来までを含む「官民一体」の段階へ入りつつあります。2025年12月の首脳会談では、両国が「拡大された戦略的パートナーシップ」を確認し、重要鉱物、エネルギー転換、物流、航空、人材育成まで幅広い分野で協力を進める方針を打ち出しました。そこにJOGMEC、NEXI、航空会社、官民フォーラムが具体的に関わり始めていることが、最近の大きな特徴です。
今回の変化は、単に政府同士の友好が深まったという話ではありません。資源国との関係を、権益・供給網・保険金融・輸送インフラ・人的接続まで含めて動かす仕組みが整い始めたという意味で、日本の中央アジア政策の実務段階が一つ進んだとみることができます。
背景と概要
この流れの制度的な土台になっているのが、2025年12月の首脳会談と「中央アジア+日本」対話です。日・カザフスタン共同声明では、エネルギー転換、重要鉱物、トランスカスピ海国際輸送回廊、AI、人材育成などが協力分野として明記されました。さらに「中央アジア+日本」首脳会合では、日本が今後5年間で中央アジア向けに総額3兆円のビジネス案件を目指す方針を示しており、カザフスタンはその中核パートナーの一つに位置づけられています。
その象徴が、2025年12月20日に東京で開かれた「中央アジア+日本」ビジネスフォーラムです。経済産業省によると、この場では中央アジア首脳訪日に合わせて企業や関係機関が結んだ158件の協力文書が披露されました。重要なのは、このフォーラムが単なる式典ではなく、日本企業、政府機関、中央アジア各国政府を接続し、案件を動かす場として使われたことです。
現在の状況
資源分野では、JOGMECの動きが最も分かりやすい具体例です。JOGMECは2026年1月、2025年12月の「中央アジア+日本」対話・首脳会合に合わせて、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタンなどの政府要人と会談し、鉱物資源分野の政策やプロジェクト見通し、技術協力について意見交換したと公表しました。あわせて、中央アジア+日本ビジネスフォーラムで署名文書を披露したことも明らかにしており、日本の資源外交が首脳会談と実務案件を直結させる段階に入っていることがうかがえます。
カザフスタンとの関係では、重要鉱物が特に大きな柱です。共同声明では、クリーンエネルギー転換と製造業に不可欠な重要鉱物の供給源多角化とサプライチェーン強靱化で協力する方針が示されました。これは、日本がカザフスタンを単なる原料供給国ではなく、経済安全保障上の要所として見ていることを意味します。JOGMECの関与は、その方向性を案件レベルへ落とし込む役割を担っているといえます。
金融面では、NEXIの動きが重要です。NEXIは2025年12月、カザフスタンの輸出信用機関KazakhExportと協力覚書を締結しました。NEXIによると、この覚書は、非一次産品およびサービス財の輸出促進や知見共有を進め、日本企業のカザフスタンを含む中央アジア進出支援を強化するためのものです。これは単なる保険会社同士の連携ではなく、日本企業が中央アジアで案件を組成する際の信用補完を強める意味を持ちます。
航空・人流の面でも、関係強化は次の段階に入っています。日・カザフスタン共同声明では、Air Astanaが2026年に両国間の定期直行便を開始する意向を示し、日本航空とAir Astanaが直行便および双方の国内線ネットワークでコードシェア契約を締結したことが歓迎されました。さらに、両国は二国間航空協定に向けた政府間交渉の開始でも一致しています。航空路線の整備は、投資や資源協力の「後追い」ではなく、今後の人的往来とビジネス拡大を先回りして支えるインフラ整備とみるべきです。
この点は、Air Astana側の開示とも整合します。同社の2024年通期資料では、2024年8月に日本航空とのコードシェア契約を締結し、2026年のアルマトイ―東京路線で日本との接続性を高める方針が示されています。つまり、直行便とコードシェアは共同声明上の構想にとどまらず、航空会社側でも実務計画として位置づけられていることになります。
注目されるポイント
第一に、最近の関係強化は「官」と「民」が並行して動いている点に意味があります。首脳会談と共同声明で大枠をつくり、JOGMECが資源案件をつなぎ、NEXIが金融・保険面を補強し、航空会社が直行便とコードシェアで人流を支えるという流れです。単独の大型契約よりも、こうした複数の実務主体が同じ方向を向いていることの方が、関係の深まりとしては重要です。
第二に、日・カザフ協力の重心は、石油一本から供給網全体へ広がっています。共同声明では重要鉱物、エネルギー転換、AI、物流、航空、人材育成までが同じ協力文脈に置かれており、日本がカザフスタンを「資源国」だけでなく「回廊国家」かつ「制度連携相手」として見始めていることが分かります。これは経済安全保障時代の協力の特徴です。
第三に、物流や航空の整備は、今後の案件実現性を左右する要素です。カザフスタンはトランスカスピ海国際輸送回廊の要衝であり、共同声明でもその協力促進が明記されました。直行便や航空協定交渉も含めれば、日本企業にとっては「遠い資源国」から「アクセス可能な事業相手」へと認識が変わる可能性があります。
第四に、現時点では「協力文書」と「実際の投資実行」を区別して見る必要があります。経産省が示した158件の文書は、あくまで覚書や協力合意を含むものであり、すべてが即時に大型投資へ転化するわけではありません。それでも、案件形成のための制度、金融、人的接続がそろい始めていること自体が、従来より一段進んだ局面だと評価できます。
今後の見通し
今後の焦点は、こうした官民一体の枠組みがどこまで具体的な案件に変わるかです。資源分野では、JOGMECが関与する協力が探査や権益形成、技術支援に結びつくかが問われます。金融分野では、NEXIとKazakhExportの連携が、日本企業の輸出、投資、サービス展開をどこまで後押しできるかが重要になります。航空面では、2026年の直行便開始とコードシェア運用が、人流とビジネス往来を本当に増やすかが試金石になります。
総じていえば、日・カザフ協力は、首脳外交だけが先行する段階から、実務を担う機関と企業が並んで動く段階へ入りました。JOGMEC、NEXI、航空会社、そしてビジネスフォーラムを通じた官民接続が機能し始めている以上、今後の関係は「資源を買う相手」としてではなく、「供給網・物流・人流を一緒に設計する相手」として深まっていく可能性があります。最近の動きは、その入口を示しているといえそうです。

