日本とウズベキスタン、再エネ協力はどこまで進んだか?JBIC融資が映す新しい連携

はじめに

日本とウズベキスタンの関係は、資源協力や政府間対話の段階から、再生可能エネルギーの実案件を官民で動かす段階へ入りつつあります。その象徴が、2025年10月に公表されたJBICの太陽光発電・蓄電2案件への融資です。これはJBICにとって、ウズベキスタンで初めての再生可能エネルギー事業向け融資であり、日本企業、国際金融機関、ウズベキスタンの電力システム改革が一つの案件で結びついた点に意味があります。

もっとも、今回の協力を「日本がウズベキスタンの再エネ市場を主導し始めた」とまで言うのは早計です。現状は、発電所建設、保険・金融支援、制度対話、送配電網の整備支援がようやく一つの流れとしてつながり始めた段階です。つまり、単発の融資案件というより、日本とウズベキスタンの再エネ協力が“実装フェーズ”に入り始めたと見るのが最も実態に近いでしょう。

背景と概要

ウズベキスタンが再エネ拡大を急ぐ背景には、電力需要の増加と既存インフラの制約があります。世界銀行は、同国では電力需要が2030年までに倍増し、1,200億キロワット時を超える見通しだと説明しています。一方で、2024年時点の配電損失は約13%に達し、配電設備の半数超が30年以上稼働しており、停電や供給不安定の要因になっています。再エネ導入は気候対策だけでなく、増え続ける需要と老朽化した電力インフラへの対応という現実的課題とも直結しています。

こうした中で、日本とウズベキスタンは、2024年1月に日本の経済産業省とウズベキスタン・エネルギー省の間でエネルギー・トランジション協力覚書を結びました。2025年12月の共同声明でも、この覚書と、同年9月の「中央アジア+日本」第2回経済・エネルギー対話で示されたカーボンニュートラルに向けたロードマップが歓迎されています。共同声明は、エネルギー安全保障、経済成長、脱炭素化を同時に達成する必要性を確認し、JICAの技術協力、民間企業間協力、二国間クレジット制度の活用まで含めて協力を進める方向を打ち出しました。

現在の状況

再エネ協力の中核にあるのが、JBICが2025年10月に公表した太陽光発電・蓄電2案件です。JBICによると、両案件の総発電容量は1,000MW、総蓄電容量は1,336MWhで、発電した電力は完工後25年間、全量をウズベキスタン国営送電公社に売電します。融資先はACWA Power Sazagan Solar1 FE LLCとACWA Power Sazagan Solar2 FE LLCで、JBIC融資額は合計で約6億3,500万ドル、協調融資総額は約14億4,600万ドルです。日本側では住友商事、中部電力、四国電力が関与しており、案件の規模と日本企業の参画度合いの両面で、これまでの協力より一段踏み込んだ内容になっています。

同じ案件はNEXIの保険支援でも裏打ちされています。NEXIは2025年10月、同プロジェクト向けに約4億2,500万ドル分の商業銀行融資を保険対象とし、中央アジアで初めて再エネ案件を支援したと公表しました。NEXIはこの案件について、人口増加と経済発展で電力需要が高まる一方、同国の発電の約80%が天然ガス依存であること、政府が2030年までに再エネ比率を総発電容量の30%へ高める目標を持つことを踏まえ、環境・気候対策と日本企業の海外展開支援の両面で意義があると位置づけています。

制度面でも進展があります。NEXIは2025年12月、ウズベキスタン・エネルギー省と脱炭素化・エネルギー転換分野の協力覚書を結びました。この覚書は、電力分野での直接対話の枠組みをつくり、日本企業の技術導入や案件組成につなげることを目的としています。2025年12月の共同声明も、NEXIとエネルギー省の協力を歓迎しており、発電所1件の融資にとどまらず、案件を継続的に生むための制度的な受け皿づくりが始まっていることが分かります。

官民対話の場も整ってきました。2025年12月の日本・ウズベキスタン ラウンドテーブルでは、赤澤経済産業大臣とミルジヨーエフ大統領が共同議長を務め、日本企業が現地事業の推進に向けて直接対話し、複数のビジネス協力文書も披露されました。経産省はこの場で、日本の技術とノウハウを活用した「現実的な脱炭素化」を進めたい考えを示しており、再エネ協力は単なる政府間合意ではなく、企業案件を発掘・具体化する場とも結びついています。

注目されるポイント

第一に、今回のJBIC融資は「再エネ発電所をつくる」こと自体より、日本とウズベキスタンの協力が上流の政策対話から下流の案件実装へ移ったことを示しています。これまでの関係は、エネルギー移行の方向性を共有し、制度改革や技術協力を進める段階が中心でした。そこに今回は、長期売電契約、国際協調融資、NEXI保険、日本企業の出資・関与がそろい、金融・保険・技術・制度が一体化した形になっています。これは、日・ウズベキスタンの再エネ協力が「話し合いの関係」から「共同でリスクを負う関係」へ進み始めたことを意味します。

第二に、協力の本当の焦点は、発電設備そのものだけでなく、電力システム全体の受け皿づくりにあります。世界銀行は、再エネ拡大のためには送配電網の更新が不可欠であり、2025年5月には再エネの系統統合と供給安定化を支援する1億ドル融資を決定しました。老朽化した設備、配電損失、接続能力の不足が残る中では、発電所建設だけでは再エネ比率を十分に引き上げられません。日本の協力も今後は、発電案件の積み上げと並んで、系統、蓄電、エネルギー効率化、制度整備へどこまで広がるかが重要になります。

第三に、この協力は日本側にとっても単なる海外インフラ輸出ではありません。NEXIは同案件を中央アジア初の再エネ案件支援と位置づけ、日本企業の中央アジアでの事業機会拡大と、世界の再エネ開発分野での競争力維持につながると説明しています。つまり、ウズベキスタンは日本にとって、脱炭素支援の相手であると同時に、日本企業のGX案件形成能力を試す市場でもあります。再エネ協力は、外交、経済安全保障、インフラ輸出の三つが重なる分野になっています。

今後の見通し

今後の焦点は、今回のJBIC融資が単発で終わるのか、それとも日本とウズベキスタンの再エネ協力の雛形になるのかです。共同声明では、エネルギー効率化、クリーン技術、水素関連実証研究、二国間クレジット制度を通じた具体的プロジェクト開発まで視野に入っています。NEXIとエネルギー省の覚書も、今後の案件形成を前提にしたものです。したがって、次の段階では太陽光・蓄電の追加案件に加え、送配電、需要管理、脱炭素技術の導入へと協力が広がるかが問われることになります。

一方で、課題も明確です。電力需要の急増、老朽送配電網、制度改革の継続性、財政負担、民間資本の呼び込みなど、再エネ拡大には発電設備以外の条件整備が欠かせません。だからこそ今回の案件は、日・ウズベキスタン協力の「到達点」というより、「ここから本格化するかどうかを測る試金石」と見る方が自然です。現時点で言えるのは、日本とウズベキスタンの再エネ協力は、ようやく“どこまで進んだか”を数字で示せる段階に入り、その先の拡張余地も見え始めた、ということです。

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