YouTubeは本当にハリウッド4社超えなのか?広告収入と視聴データを読み解く

はじめに
YouTubeの広告収入が、ウォルト・ディズニー、NBCUniversal、パラマウント、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの合計を上回った――。こうした見出しは強いインパクトがありますが、どこまでが事実で、どこからが誇張なのでしょうか。結論から言えば、「広告売上」で見ればその見方にはかなり根拠があります。ただし、「テレビ視聴者数で競合を圧倒している」とまで言うと、やや言い過ぎです。
背景と概要
Digital Music Newsが3月に伝えたのは、調査会社MoffettNathansonの推計として、2025年のYouTube広告売上が約404億ドルに達し、ディズニー、NBCUniversal、パラマウント、WBDの4社合計約378億ドルを上回ったという内容です。重要なのは、ここで比べられているのが「総売上」ではなく、あくまで「広告売上」だという点です。YouTubeが4社の企業規模全体を超えたという話ではありません。
一方、Alphabetの公式発表では、YouTubeの2025年売上は広告とサブスクリプションを合わせて年間600億ドルを超えたとされています。つまり、YouTubeの事業規模そのものが拡大しているのは確かですが、DMNが話題にした「4社超え」は、YouTubeの広告売上と伝統メディア4社の広告売上推計を比べた結果として理解する必要があります。
現在の状況
広告売上の比較だけを見ると、YouTubeはすでに「従来型メディア4社の合計を上回る広告媒体」と見なされつつあります。DMNの記事では、2024年にはYouTubeの広告売上は361億ドルで、4社合計418億ドルを下回っていたものの、2025年には逆転したと整理されています。つまり、これは一時的な話ではなく、ここ数年の伸びの延長線上にある変化です。
ただし、視聴の話になると印象は少し変わります。Nielsenの2026年1月のMedia Distributor Gaugeでは、YouTubeは米国テレビ視聴全体の12.5%で首位でしたが、ディズニーは11.9%まで迫っていました。差は0.6ポイントにすぎず、YouTubeが単独首位であることは確かでも、「圧倒」と言うほど開いてはいません。
さらにNielsenの同じデータでは、NBCU-Versantは8.5%でした。DMNの記事は、YouTubeがディズニー、NBC、パラマウント、WBDの「ストリーミングサービス合計」よりもテレビ視聴で上回ったと紹介していますが、少なくともNielsenの親会社別シェアを見る限り、「各社を個別には上回る」が正確で、「競合他社全体をテレビ視聴で圧倒」は慎重に言い換えるべき表現です。
注目されるポイント
今回の話で最も注目すべきなのは、YouTubeがもはや「動画共有サイト」ではなく、広告市場では伝統的メディア企業と真正面から競合する存在になっていることです。しかもYouTubeは広告だけでなく、YouTube TV、YouTube Premium、YouTube Musicなどを通じてサブスクリプション収入も大きく伸ばしています。Alphabetは2025年のYouTube売上全体が600億ドルを超えたと明かしており、これは単なる広告媒体ではなく、巨大な複合メディア事業になっていることを意味します。
もう一つのポイントは、ハリウッド型メディア企業とYouTubeでは、収益の作り方そのものが違うことです。DMNは、YouTubeが標準的な動画広告の55%をクリエイターに分配していると指摘しています。つまり、YouTubeは自社制作の番組や映画を大量に抱えるモデルではなく、プラットフォームとして膨大な供給者を束ねることで広告市場を吸い上げています。伝統メディアがコンテンツ保有を強みとしてきたのに対し、YouTubeは分散型の供給構造そのものを武器にしているわけです。
今後の見通し
今後、YouTubeの優位がさらに強まる可能性はあります。DMNはMoffettNathansonの見方として、AI動画やショート動画の拡大局面でもYouTubeは有利だと紹介しています。供給量の増大に柔軟に対応できるため、従来の番組中心のメディア企業より成長余地が大きいという見立てです。
ただし、少なくとも現時点で「テレビ視聴で競合を圧倒した」と言い切るのは避けたほうがよさそうです。Nielsenのデータでは、ディズニーはすでにYouTubeにかなり接近しており、視聴の優位はあるものの圧勝ではありません。したがって、今回のニュースを最も正確に言い直すなら、「YouTubeは広告売上で伝統メディア4社合計を上回る推計が出た一方、テレビ視聴では首位だが差はまだ小さい」と表現するのが妥当でしょう。

