原油市場日報 2026年5月12日

原油価格は、週明けに再び大きく上昇しました。Brentは104ドル台、WTIは98ドル台まで戻し、背景には米国とイランの停戦協議をめぐる不透明感があります。ホルムズ海峡の通航不安が残る限り、日本のガソリン価格、電気代、物流コストにも上振れリスクが残る局面です。
きょうの値動き
米国時間5月11日の原油市場では、Brent先物が1バレル104.21ドルで取引を終え、前日比2.92ドル高、上昇率は2.88%でした。WTI先物も98.07ドルで取引を終え、前日比2.65ドル高、上昇率は2.78%です。取引中にはBrentが105.99ドル、WTIが100.37ドルまで上昇する場面もあり、WTIの100ドル台回復が再び意識されました。
なぜ動いたのか
主因は地政学です。トランプ米大統領が、イランとの停戦について「生命維持装置につながれている状態」と表現し、ホルムズ海峡の大部分が閉じたままで戦争終結の見通しが立たないことが、原油市場の買い材料になりました。ホルムズ海峡は世界の原油輸送の急所であり、ここが不安定になると、実際の供給減だけでなく、タンカー保険料や運賃にも上昇圧力がかかります。
需給面では、米在庫の減少も価格を下支えしています。EIAの最新週報では、5月1日までの週の米商業用原油在庫が前週の4億5950万バレルから4億5720万バレルへ減少しました。原油だけでなく、石油製品を含む総在庫も前週比で1110万バレル減っており、供給不安が意識されやすい地合いです。
金融市場要因としては、原油高がインフレ懸念を再び強め、ドルや金利にも影響しました。市場心理・ポジション調整では、先週の下落でいったん売りに傾いた短期筋が、イラン情勢の悪化を受けて買い戻しに動いたと見られます。
この動きは一時反応か
今回の上昇は、一時的なヘッドライン反応の面があります。ただし、単なる買い戻しだけでは片づけにくいです。Brentが104ドル台、WTIが98ドル台まで戻したのは、市場が「停戦期待」よりも「ホルムズ海峡の不安」を再び重く見始めたためです。
構造的な原油高に変わるかどうかは、実際の船舶通航と停戦協議の行方で決まります。米国とイランの交渉が前進し、ホルムズ海峡の通航が回復すれば、リスクプレミアムは剝がれやすくなります。一方で協議が崩れ、通航制限が長引けば、WTIの100ドル台定着やBrentの105ドル超えが再び焦点になります。
日本への影響
日本にとっては、Brentが100ドル台に戻ったことが重い材料です。日本は中東産原油への依存度が高いため、ホルムズ海峡の不安はガソリン価格、電気代、航空運賃、物流コストに波及しやすくなります。円安が重なれば、海外の原油価格上昇は国内の輸入コストにより強く反映され、家計のインフレ実感を押し上げる要因になります。
明日の注目点
明日は、WTIが100ドル台に再び乗せるか、Brentが105ドル台を維持できるかが焦点です。あわせて、米国とイランの停戦協議、ホルムズ海峡の船舶通航状況、米在庫減少が続くかを確認する必要があります。原油価格が今後どうなるかは、和平期待の見出しだけでなく、実際に原油と石油製品が市場へ届いているかで決まる局面です。

