原油市場日報 2026年7月9日

原油価格は、きょう朝時点で再び大きく上昇しました。Brentは清算値で78ドル台、時間外では79ドル台まで上がり、WTIも73ドル台から74ドル台へ伸びています。米国がイランへの追加攻撃を開始し、ホルムズ海峡の船舶リスクが再燃したことで、原油市場は「供給回復を織り込む相場」から、再び「地政学リスクを買う相場」へ揺り戻されています。
きょうの値動き
米国時間7月8日の原油市場では、Brent先物が1バレル78.02ドルで取引を終え、5%超の上昇となりました。その後の時間外取引では79.28ドルまで上昇しています。WTI先物も清算値で73.52ドル、時間外では74.76ドルまで上がりました。前日までBrentは74ドル台、WTIは70ドル台前半にありましたが、1日で一段高となり、中東リスクの上乗せ分が再び価格に乗りました。
なぜ動いたのか
主因は地政学です。米中央軍は、ホルムズ海峡の通航を維持するためとしてイランへの新たな攻撃を開始しました。これに先立ち、イランは米軍拠点への攻撃を行い、ホルムズ海峡ではタンカー攻撃が相次いだとされています。ホルムズ海峡はイラン戦争前に世界の石油供給の約5分の1が通過していた要衝であり、ここで船舶リスクが高まると、原油価格は一気に上振れしやすくなります。
需給面では、EIA在庫統計がやや複雑です。7月3日までの週の米商業用原油在庫は前週比300万バレル増の4億1140万バレルとなり、原油だけを見れば弱材料です。一方、ガソリン在庫は190万バレル減、留出油在庫は500万バレル減となり、燃料在庫の薄さは価格を支える材料です。原油在庫は増えても、ガソリンや軽油が減っているため、夏場の燃料需給への警戒は残ります。
金融市場要因としては、原油高がインフレ懸念を再び強めています。Reutersは、米国とイランの軍事的応酬を受けて原油価格が上昇し、世界の株式市場にも不安定さが広がったと伝えています。市場心理・ポジション調整では、供給回復を見込んで売っていた短期筋が、追加攻撃とタンカーリスクを受けて一斉に買い戻したと見られます。
この動きは一時反応か
今回の上昇は、まずは地政学ヘッドラインへの一時反応です。ただし、単なる短期的な買い戻しだけでは片づけにくい面もあります。米国がイラン産原油販売の制裁緩和を取り消し、さらに軍事行動を再開したことで、イラン産原油の供給回復シナリオが後退したためです。
一方で、構造的な原油高に戻ったと断定するのも早いです。OPECプラスは増産方針を進めており、ホルムズ海峡の通航が大きく止まらなければ、供給回復期待は残ります。つまり今の相場は、「供給増で下がる力」と「中東リスクで跳ねる力」がぶつかる局面です。Brentが80ドルを明確に超えるかどうかが、次の分岐点になります。
日本への影響
日本にとって、Brentの70ドル台後半への上昇は警戒材料です。原油価格そのものは6月前半の高値より低いものの、円安、タンカー保険料、海運コストが重なると、国内のガソリン価格や物流コストは下がりにくくなります。特にホルムズ海峡の船舶リスクが再燃すると、中東依存度の高い日本では、原油価格以上に「安定して届くか」が重要になります。
明日の注目点
明日は、Brentが80ドル台に乗せるか、WTIが75ドル台を試すかが焦点です。あわせて、米国の追加攻撃が続くか、イランがホルムズ海峡でさらに船舶リスクを高めるか、そしてEIA統計で増えた原油在庫よりも減少した燃料在庫が重く見られるかを確認する必要があります。原油価格が今後どうなるかは、供給回復の数字と、中東の軍事リスクがどちらを上回るかで決まります。
