原油市場日報 2026年7月11日

週末前の原油価格は小幅に下落しました。ただし、週間ではBrent、WTIともに上昇しており、米国とイランの衝突、ホルムズ海峡の船舶リスク、燃料在庫の薄さが市場に残っています。日本にとっては、原油価格そのものよりも、ガソリン価格や物流コストに波及する「海運リスク」がまだ消えていない点が重要です。
きょうの値動き
米国時間7月10日の原油市場では、Brent先物が1バレル76.01ドルで取引を終え、前日比0.38%安でした。WTI先物は71.41ドルで、前日比0.93%安です。一方で週間ではBrentが約5.5%高、WTIが約4%高となり、週全体では中東リスクを反映した上昇が残りました。
なぜ動いたのか
主因は、地政学リスクの一部後退です。米国とイランの緊張は続いていますが、さらなる軍事拡大が避けられるとの見方や、カタール仲介による協議継続への期待が出たことで、週末前には利益確定売りが入りました。ホルムズ海峡は世界の原油・ガス供給の重要ルートであり、ここでの通航不安が続く限り、原油価格にはリスクプレミアムが残ります。
需給面では、米原油在庫の増加が下押し材料です。直近のEIA統計では米商業用原油在庫が増えた一方、ガソリン在庫と留出油在庫は減少しており、夏場の燃料需給にはまだ引き締まりが残っています。原油そのものはやや緩んでも、ガソリンや軽油が薄いことが、価格の下支えになっています。
金融市場要因としては、インフレ懸念と金利高止まりが原油需要への不安を強めています。市場心理・ポジション調整では、前日までの上昇を受けて短期筋が買い持ちを減らした一方、ホルムズ海峡リスクを見て下値では買い戻しも入りやすい状態です。
この動きは一時反応か
今回の下落は、一時的な調整と見るのが妥当です。Brentが76ドル台、WTIが71ドル台まで下がったとはいえ、週間では上昇しており、中東リスクが完全に剝がれたわけではありません。米国とイランの交渉が続けば上値は抑えられますが、船舶攻撃や通航制限が再燃すれば、原油価格は再び80ドル方向へ戻る可能性があります。
一方で、構造的な原油高に戻ったとも言い切れません。OPECプラスの増産、ホルムズ海峡の段階的な通航回復、米原油在庫の増加は上値を抑える材料です。いまの相場は「供給回復で下がる力」と「地政学リスクで跳ねる力」がぶつかる局面です。
日本への影響
日本にとって、Brentの70ドル台半ばは一応の安心材料です。この水準が続けば、ガソリン価格、電気代、航空運賃、物流コストへの上昇圧力は和らぎます。ただし、ホルムズ海峡の船舶リスクが残る限り、タンカー保険料や運賃は下がりにくく、国内価格への反映には時間差が出ます。
さらに円安が重なると、ドル建て原油価格が落ち着いても、円換算の輸入コストは下がりにくくなります。家計目線では、Brentの水準だけでなく、円相場、ガソリン在庫、海運コストを合わせて見る必要があります。
週明けの注目点
週明けは、Brentが75ドル台を維持するか、WTIが70ドル台前半で下げ止まるかが焦点です。あわせて、米国とイランの協議が継続するか、ホルムズ海峡の通航量が回復するか、米ガソリン在庫の減少が続くかを確認する必要があります。原油価格が今後どうなるかは、中東情勢の見出しだけでなく、実際に船が安全に通り、燃料在庫が積み上がるかで決まります。

